国土学からの提言 レジリエントな国土づくり
大石久和 橋梁と基礎 2013-8 Vol.47
日本の国土の特徴
①国土形状が細長い
②「四つの島」に分かれている。
③脊梁山脈で国土が南北に分断されている。
④地質が複雑で不安定
⑤狭い平野が分散し、大都市が河川の氾濫区域にある。
⑥大都市が軟弱地盤にある。
⑦国土の全域で大地震の可能性がある。
⑧豪雨が多い。
⑨台風の通り道である。
⑩国土の60%が積雪寒冷地域である。
自然災害空白の時代
①日本は歴史上何度も大災害集中期を経験している。1854~60年はすさまじかった。
1854年 安政東海地震、安政南海地震
1855年 安政江戸大地震
1856年 江戸の大風災
自然災害が明治維新の背景にある。
②敗戦直後
1945年 三河地震(2,306人)、枕崎台風(3,756人)
1947年 カスリーン台風(1,930人)
1948年 福井地震(3,769人)
1959年 伊勢湾台風(5,098人)
○空白の36年間(1,000人以上の被害者ゼロ)に高度経済成長
④1995年 阪神・淡路大震災(6,437人)
○空白の16年間
⑤2011年 東日本大震災(20,315人)
インフラの効果
日本は平常時を基準にした、経済の視点からだけの論理でものを考えてきた。
阪神・淡路大震災で非常時モードの必要性・重要性が指摘されたが、その後も地域の安全に直結するインフラについてさえ費用対効果分析ばかりが要求され、平常時の効用のみで事業を評価し続けてきた。
インフラはストックとしてはじめて効果を発揮する。公共事業というフローの視点でしか評価してこなかった。
「福祉か公共事業かという問題の立て方は間違っている。福祉は天から降ってくるものではなく、外国から与えられるものでもない。日本人自身が自らバイタリティーをもって経済を発展させ、その経済力によって築き上げるほかに必要な資金の出所はないのである。」(日本列島改造論、田中角栄)
「成長のエンジン」を動かし続けるために、われわれは国土に働きかけ、より利用しやすい国土、より安全な国土をつくっていかなければならない。
日本は1995年以降、デフレ経済のもとでほとんど経済成長していない。
ピーク時に60兆円の税金を納めることができた日本国民は、近年は40兆円しか収められないようになっている。
国土のレジリエントresilient化を早期に図る必要がある。